株式会社レックス

What is Materiality?

2022.09.29

企業広報の分野において、昨今ますます、サステナビリティに関する取り組みが重視されるようになりつつある。この取り組みの重要なキーワードとして挙げられるのが「マテリアリティ」という語(概念)だ。日常生活ではほとんど使用されない、カタカナ書きの「マテリアリティ」とは、本来どのようなものなのだろうか。

GRIスタンダード(注1)では、下記のように定義される。

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財務報告において、マテリアリティとは(中略)とりわけ投資家による経済的な意思決定に影響を与える基準と一般的に考えられている。

サステナビリティ・レポートでも同様の概念は重視されるが、それはより広い範囲でのインパクトとステークホルダーという二つの側面に関わる。サステナビリティ・レポートにおけるマテリアリティとは、どの関連トピックが重要か、報告の対象として不可欠かを決定する原則なのである。すべてのトピックが等しく重要なわけではない。トピック間の相対的な優先順位を反映することが、レポートでは望まれるのである。

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GRIスタンダードによれば、「マテリアリティ」とは、「複数の関連トピックのあいだで相対的な重要性を決める基準」である。実際、下記のサイトを参照すると、「重要なトピック」である key issues を割り出すのが「マテリアリティ」 materiality と考えられているのが分かるだろう。

 

 

また、materialityという基準をもとに行われるのが、material assessment ないしは material analysis であり、それを図式化したものが material matrix である。いずれもサステナビリティ・レポートでは欠かせない情報である。

 

 

 

欧米に本社を置くグローバル企業では、上記のように、GRIスタンダードの基準に従って、materialityの語を使用するケースが多い。一方、日本企業のサステナビリティ・レポートでは、materiality を key issues と同一視するような「マテリアリティ(重要課題)」という表記がよく見られる。

 

 

GRIスタンダードに厳密に従うと、「マテリアリティ(重要課題)」は、やや問題のある表記なのかもしれない。しかし、カタカナ書きの「マテリアリティ」から、GRIスタンダードによる意味を汲みとり「重要課題」と区別して考えるのは、(企業広報の用語を知らないかぎり)難しいことから、「マテリアリティ(重要課題)」という表記は、当面のあいだ妥当であると個人的には考えている(ただし、日本語の「マテリアリティ」を英語に翻訳する場合は、「マテリアリティ」と「重要課題」の本来的な違いを意識する必要がある)。

GRIスタンダードにもとづく「マテリアリティ」の意味が、「アイデンティティ」や「セクシュアリティ」と同様、世間に浸透していけば、「マテリアリティ」と「重要課題」を区別して使用できる日がくるのではないだろうか。

(注1)経済、環境、社会に与える影響を報告し、持続可能な発展への貢献を示す基準。1997年に米国ボストンで設立された組織 Global Reporting Initiative が提供している。