株式会社レックス

2022年11月 歳時記

2022.10.10

冬立つや 御所柿の手に 冷ゆるほど と、壁掛けの暦にある。大陸からの季節風がいつ吹き始めるか、こがらし、木を枯らすと言う意味の寒い風が、11月初めに吹き始める。筆者は、米国のボストン市郊外に住んでいたことがあるが、葉っぱが輝くような黄金色に染めていた木々が一斉に葉を落とし、一夜にして大地に突き刺さった棒の羅列の光景になったのが、11月の初めだったと記憶する。

沖縄では、大陸からの季節風のことを、ミーニシという。ニシは、北のことだから、それまでの暖かい南風(ハエ)から、新しい(ミー)北(ニシ)風に変わる。しかし、沖縄では、霜が降りる寒さはもともとない上に、秋の気配が濃い小春日和に恵まれることが多いから、ミーニシが吹く直前までは、ハワイよりも優れた観光地として、コロナ禍後の暖かい旅先として、11月の沖縄観光をお薦めしたい。

11月1日は大安、3日は文化の日だ。11月7日は立冬。一の酉が、11月4日。二の酉が11月16日だ。今年は三の酉もある。11月28日だ。東京の下谷の神社で、酉の市が立って、小さな熊手を買って、しかも値切りに値切って買うことを楽しみにしている人士も少なくないが、コロナ禍の行く末がこの頃には打ち上げになっていることを期待したい。目黒の大鳥神社も、同じように、酉の市の賑わいを体感するために都合が良い。目黒駅からも遠くない。

11月15日は、七五三だ。男女三歳の髪置、男子五歳の袴着、女子七歳の帯解からなる。晴れ着姿で、神社詣でをする習慣は、実は、子供の成長を祈る祭りとしてだけではなく、日本の親の慈愛が表現されている祭りである。明治初期に日本を訪れた英国の旅行家、イサベラ・バードは、我が子を大切にする様子を見て、「父も母も、自分の子に誇りをもっている」と書いている。浮世絵も残っている。

二代目歌川豊国の絵だが、髪置、帯解、袴着をよく説明している。

11月23日は、勤労感謝の日だ。もともとは、新嘗祭の日である。収穫際である。令和の時代では、天皇誕生日が移動したために、年の最後の国民の祝日である。月末になると、冷たい北風が道路にたまった木の葉を吹き上げるように散らす季節になる。近くのコンビニでのおでんも繁盛することになる。横文字の落ち着きのない店舗で、もともとは土鍋で煮込む、大根、こんにゃく、はんぺん、がんもどき、すじ、昆布、たまご、などの味は格別で、人気商品になった。一方、コンビニのお陰で単なる「関東煮」ではなくなったのだ。

朔風払葉(さくふうはをはらう)。本格的な冬の到来だ。本格的な寒さに対峙しなければならない。それなりの心構えをして、大陸からの激しい季節風が吹き荒れても、幾度も時雨を降らせてもたじろいでならない。自分の心を、むしろ、遠い春の到来に目を向けて、それなりの研鑽を重ねて、むしろ寒い季節の到来は、自らを鍛える季節が到来したのだと、空元気でも出してみることだ。牧水の、白玉の歯にしみ通るような酒を、友人と酌み交わすには絶好の季節だ。

11月は、実は歌舞伎の正月といわれる。華やかな顔見世は、江戸では11月に興行された。顔見世の定番は、暫(しばらく)である。