2022年7月 歳時記
2022.06.29
昨年2021年7月23日は、干支では不成就日であった。不成就日とは、障りがあって物事が成就せず、悪い結果を招く凶日とされている。特に開店などには不向きで、何事かを思い立ったり願い事をすることは避けるべきであるとされる日である。
夏の土用は、7月20日頃から8月の立秋の前日までで、土木工事になどにとっては大凶の期間であるとされているから、オリンピックの日程の決定にあたって、「吉祥あれかし」と、縁起を担ぐような日本人の心優しい判断は排除されていた。それでも、7月23日は、夏の申(さる)で間日(まび)だから、土曜の期間に含まれても障りがないとされていたのは、一抹の救いにはなった。
正月15日を上元、7月15日を中元、10月15日を下元、あわせて三元という。金品を捧げて贖罪をするという中国に発する習慣が発祥であるが、日本では、友人などに日ごろのお礼を表す印としての贈り物が、「お中元」の習わしになっている。7月15日は「お盆」であるが、新暦によればとの前提がある話で、旧暦の7月15日に行う地方や、全国戦没者追悼式と合わせた終戦記念日に、お盆を執り行う地方は今も数多い。
7月7日は、たなばたであるが、これも旧暦の七夕の方が、賑やかに祝われる地方が多いのは、旧暦は月や星の運行に連動して、明治以来日本が採用した新暦は、太陽の動きに地球が拘束されていることに基本的な違いがあるからだろう。
7月は、暑さが大好きなような植物が繁茂する。サルスベリの紅の花はもとより、ミソハギやカンゾウもこの頃に咲く美しい花である。ハスは、スイレン科の多年草であり、仏教の経文にも妙法蓮華経とある。はちすはのにごりにしまぬこころもて 何かは露を玉とあざむく、今日よりは露のいのちもおかしからず、蜂巣の上の玉とちぎれば、ともある。
シジュウカラやヤマガラが繁殖して騒がしいのもこの7月である。大都会の東京でも、巣箱をかければ、シジュウカラが巣作りをする可能性は大いにある。高層ビルのアパートのベランダで野鳥に餌をやるのもまんざらではない。
日本の夏は、どこの熱帯の国にも負けないような本格的な暑さだが、一方ではツンドラ地帯のような寒さも日本にはあるから、それこそ世界の気候が集合しているような国だ。
蛍も、実は、7月が一番の見所になる季節だ。源氏蛍が、ヘイケボタルよりも強い光を放つことは余り知られていないが、蛍が乱舞する時間が、夜8時頃から9時頃までと決まっていることも知られていない。蛍火は、人の命のはかなさを象徴しているかのようだ。露があけて晴れ上がった中天の星の輝きよりも遙かに短い光の点滅だ。明治天皇陛下が崩御されたのは、7月30日の暑い盛りの日であった。