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2022年12月 歳時記

2022.11.20

年号の読み方については、大正・昭和・平成・令和と改元された際の内閣告示にふりがながつけられているから、問題ない。しかし、年号の読み方は難しく、年月が経つにつれて変わってしまうことがままあった。大化が、律令国家として制定された初の年号として従来から考えられてきて、読み方は、タイクワ説が多いがダイクワ説もある。大化の改新は、ダイクワノクワイシンともなる。大宝の年号は、実は、ダイホウが正しく、普通タイホウと読んでいるが誤りである。慶雲の場合は、ケイウンではなく、キャウウンであり、ケイウンと読むようになったのは、江戸時代からである。薩摩の琉球出兵があった慶長のときは、2通りの読み方で、ケイチョウとキャウチョウとが並立していた。天平は、今はだれでもテンピョウと読んでいるが、正しくは、濁ってテンビャウかテンヘイである。

建武は、ケンムとケンブ(フ)とふた通りある。嘉吉は、カキツと後から読まれているが、もともとカキチである。有名な明暦の大火は、メイリャクの大火が正しい。年後の暦の字はすべてリャクである。宝暦も同じであるが、この頃は、レキと読むことが増えたようだ。明治は、明治元年には、ミャウヂと読んでいた人がかなりあったし、東京を、トウケイと読んだ人もいたが、さすがに、トンチンと読んだ人は中国人以外にはなかった。

さて、12月は師走である。師走の語源は、不詳である。春待月、三冬月、梅初月などともいうが、いずれも新暦にはふさわしくない。劇場用語で、「最高潮の場面で客席にざわめきが起きること」を「じわ」というが、コロナ禍が世界で収束したような令和4年の暮れのざわめきが聞こえるから、師走の語源を「じわ」からとしたい。

師走の花を、あげると、石蕗(つわぶき)の花が身近だ。特に関東地方では、道ばたの少し湿り気のある場所にさりげなく咲いている。南天も師走の花だ。新年に飾る代名詞のようになっている。南天の花言葉は「難を転じて幸せを招く」で、南天の葉を赤飯の上におく習慣すらある。実は薬用で、咳止めや喉の痛みに効果があることが古くから知られている。七竈(ななかまど)は、北海道や東北では街路樹ともなっていて、色をなくした冬景色のなかで、目のさめるような朱色の実をつけていると、すっかり葉をおとした冬木立のなかで一段と鮮やかになる木だ。七回かまどにくべても燃え残るような、燃えにくい木だから、上質の堅炭の材料ともなる。「すりこぎ」に加工しても磨り減らない木であるが、「しない」にはならない。

12月1日は、映画の日。鉄の記念日、世界エイズデー、歳末助け合い運動が始まる日だ。3日は、秩父夜祭。4日から人権週間。5日は、納めの水天宮。7日は、大雪。高い山では積雪となり、冬将軍がやってきてくる。雪が降るのは豊作の前兆ともされる。古今集に、み吉野の山の白雪つもるらし ふるさと寒くなりまさるなり 坂上是則 とある。9日は、皇后陛下の誕生日。14日は、高輪泉岳寺で、義士祭。15日から年賀郵便特別取り扱い開始、東京世田谷ボロ市。19日は、浅草羽子板市、22日は冬至。太陽が最も南に偏り、北半球では正午の太陽が最も低く、日照時間が最短になる日である。冬至を境として日が一日一日と長くなる。太陽の生命が復活して、自然の万物が眠りか醒めてよみがえってくるのだ。一陽来復だ。28日は、御用納め。クリスマスももともとは、冬至の祭であるし、太陽暦の正月も、冬至の日を基準にしたが、ずれている。

天安門事件の前の年の大晦日だったと記憶するが、北京の王府井(わんふうちん)の繁華街の外れにある天主教の教会の鐘の音が、NHKの番組、行く年来る年で、実況中継されたことがある。その年のクリスマスイブの夜に、ポーランドの外交官と一緒に、北京の貧しき人々と一緒に、豆電球で飾られたその教会の屋台を覗いた。すっかり、北国に春がきた様で、香港から闇で輸入した新約聖書や、賛美歌のテープなどが売られていたし、聖堂では、「貧しき人々」が地下教会から出てきたボロ着のままに跪いて、祷りをささげていた。

大祓の行事は、年に2回、6月30日と12月31日に宮中はもとより、全国の神社でも、恒例の行事として行われている。定期の大祓が定められたのは、文武天皇の大宝元年(701)からである。

365日の花言葉の本を、仙台在住の知人から送られて楽しく読んだことがあったから、季節の移ろいを味わうことは、日本人の感性を磨く方法である。日頃思ってもみないことを発見して、歳時記の文字にしてきた。今年の最終回。日ごろは話もしない同僚や友人に語りかけるようにして書いてきたつもりだ。文章の出来不出来はあったが、ただ字数を埋めるだけではなく、楽しく書くことが出来た。新発見もあった。季節の花や野鳥にも関心が向くことが出来た。