女性のカツヤク
2022.11.15
具体的な文脈はさまざまであるが、企業広報の分野で、昨今「女性の活躍推進」がテーマになることが多くなってきた。企業のイメージアップにとどまらず、労働力不足解消や働き方改革を通じた生産性アップなどにつながるテーマであるからと考えられる。
こうした傾向に伴い、「女性の活躍」という表現を翻訳する頻度も増加しつつある。問題は「活躍」を簡潔にあらわす訳語がない点だ。手元の和英辞典で「活躍」をひくと、一対一で対応する単語は出てこず、そのかわりに active, actively involved, success, great contribution, doing well を使った例文が並ぶ。
企業広報で話題になる「女性の活躍」はというと、2015年に成立した「女性活躍推進法」に紐づいていることが多い。この法律は Act on the Promotion of Female Participation and Career Advancement in the Workplace などと訳される。抽象的な「活躍」を、具体的な文脈に置き換え、「職場への参入とキャリアアップ」と読み替えた訳と言える。
この女性活躍推進法にのっとり、厚生労働省は、女性の活躍を促進する優良企業を認定している。では、この認定を受けた企業は「女性の活躍」をどう訳しているだろうか。
簡潔な表現としては、empower あるいは empowerment を使用した表現が目に付く。
… outstanding initiatives to empower female employees …
… its superior contribution to the empowerment of female employees …
… Company Promoting Women’s Empowerment …
もう少し長い表現になると、使用する単語はまちまちであるが、「能力の発揮」とからめた言い回しが複数の企業において見られる。
To create a work environment where female employees can achieve their full potential and work at ease …
… how well workplaces enable women employees to fully manifest their abilities
ORIX Life will continue to work on creating conducive workplaces where every employee can fully demonstrate their capabilities
そのほか、女性活躍推進法の訳語と同じく、participation や career advancement を使った表現のほか、involvementを使った表現(promote the active involvement of female employees)も見られた。
女性の活躍を推進するための取り組みが増加していることは非常に望ましいが、それは逆に職場のジェンダー平等が道半ばであることを意味するように思われる(世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」によれば、「経済」分野における日本の順位は156か国中117位)。今しばらくは、統合報告書やサステナビリティサイトで、「女性の活躍」をどう翻訳すべきか、意識する日々が続きそうだ。